みんなの聞こえ
話の腰を折りたくないばかりに聞こえたふり、分かったふりをして後から後悔する、誰にでもそんな経験があります。でもそれがいつもの悪い癖になっているとしたら?自らも難聴の当事者として、国際的に活躍するジャンルカ.トロベッタ氏からの提言をどうぞ!
2017/11/13
聞こえ

聞こえているふりがなぜダメなのか、そしてその習慣から脱するには?

Why pretending to hear is bad and how to break the habit

ジャンルカ=トロベッタ、Healthy Hearing | 2017年8月8日

地元のパブで馴染みの友人たちと一緒に、初めて会う人と会話を始めたとしましょう。パブにはBGMが大音量で流れ、さらにまわりの人たちの会話もこれに重なり、彼女があなたに話しかける声はかき消されてしまいます。あなたは「お名前は?」「どこから来たの?」…といった最初の二言三言ぐらいはなんとか聞き取ることができますが、すべてをはっきりと聞き取ることはできません。それでもたわいない内容なのでそのまま話についていきます。

彼女の瞳から、情熱をこめて語っていることが伝わります。彼女は生き生きと話しをするので、波長を合わせてなんとか聞き取ろうとするのですが、話の全容がどうにもつかめなくなっています。ところどころ繰り返してもらうようにお願いして、彼女は優美に繰り返してくれますが、彼女の話についていくのはあまりにも難しい状況です。あなたは、情緒的に一杯一杯になってしまい、頭に霧がかかってもはやはっきりと考えることができません。

ここがあなたの思考の限界点といえるかもしれません。つまり、無理をして聞き取ろうとしたり、緊張状態を継続させたりするぐらいなら、全部聞こえているふりをするほうが良いとあなた(の感情)が決定してしまう瞬間です。

あなたは笑顔でうなずきます

彼女はあなたの相づちに応えます。良い感じです!彼女とはつながっている・・・そして再びうなずくと、彼女は興味をもってエネルギッシュに話し続けます。そしてまたあなたはうなずきます。

今度は、彼女があなたに質問をし始めます

その瞬間遠くで何かブレーキがキーッとかかったような音がしたかもしれません。その先には人とのつきあいにおける断崖が見えます。あなたは、どうにか自身の感情を奮い立たせますが、質問が何かをもう一回聞き直す代わりに、おずおずと「はい」と答えてまたうなずきで答えます。

突然彼女の表情には戸惑いが生まれます。何ということか!彼女がたずねていたのは「はい、いいえ」の質問ではなかった!あなたは肩をすくめて、騒音がひどいと文句をいいながら受け取った会話のキャッチボールの球を彼女の側に無理に投げ返します。 ちょっとした赤面を隠せません、この瞬間をやり過ごす何かを見つけなければ。

「何か彼女に聞かなくては…」心の声があなたに伝えます。 「何故ジェイミーを知っているのですか?」 - 彼こそがこの夜の集まりを計画したのです。 彼女はジェイミーとは長い間の知り合いで、同じ学校に通っていたところまでさかのぼるのだと答えます。 危機は回避されました! あなたは、少なくとも今のところ会話の流れに戻れたように感じます。

私は若い頃、かなりの頻度で聞こえているふりをしていました、そして何度もそんな自分を恥ずかしく思っていました。 私は難聴を持って育ちそして長い間、私はいまお話ししたような状況に上手く対処する術を知りませんでした。

私がこれから皆さんにお伝えしようとしていることを誰かがもっと早く教えてくれていたらと切に思います。 私の人生と、またにぎやかなパブで交わす会話についてももっとずっと簡単なものにしてくれたでしょう。

なぜ私たちは聞いているふりをしてしまうのでしょう

その理由は様々です。 会話の流れを妨げたくないと感じる人もいれば、聴覚障害に注意を向けられることを避ける人もいます。 あるいは単純にその場の状況にどう対処すべきか分からないだけかもしれません。 特にグループでの会話では、意味を理解するためにみんなに何度も何度もすべてを繰り返してもらうことで周囲に負荷をかけたくないと感じます。

実のところ、みんな聞こえているふりをしているのです、健聴の人もまた同じです。秘密が明らかになりましたね!話している人の話の腰を折らない、それは文化的習慣だったのです。

考えてみてください、誰かが情熱的に面白い話をしているときに、そこに聞いたことのない言葉やよく知らない地名や有名人の名前が出てきたとしても、おそらくその話を遮ることはないのではないでしょうか?ジョークがひとくさり話されたところで、面白かったふりの笑いでやり過ごすかもしれません。またはGoogleでこっそり検索します。私たちは誰もが、会話の輪の中にいたいと思いますし、冗談に加わることで仲間になれた気持ちがします。

時々聞こえているふりをするのはおそらく何の問題もありません。でももし難聴の問題があるにもかかわらず、聞こえているふりをしているなら、周りの人には、あなたは他の人たちと同じように聞こえているという印象を与えているかもしれません。

実は、みんな聞こえているふりをしているのです

従って仕事場での電話会議の間、実際には話の多くを聞き逃してしまっているにも関わらず聞こえているふりをしてしまい、結果とても大きなイライラを抱えることになります。それなのに聞こえていないのに聞こえているふりをしてしまう、その問題の繰り返しを自分自身で習慣化しがちです。そして心のどこかで、そのことに気付いているので、絶望的な感情に襲われます。

悪い癖の引き金となったのは

悪い癖をやめる鍵は、そうなってしまう引き金(=きっかけ)は何かを特定することです。引き金が分かればそれに続くルーティン(=いつもの習慣)を変えることができます。ここでの引き金とは「私たちはみんな聞こえているふりをしている」がそれにあたります。

私にとってのいつもの習慣の引き金とは、私自身は聞くことに四苦八苦しているのにも関わらずその部屋の誰もが会話についていくのに全く問題ないように見えるときです。「いまなんと仰いましたか?」と1度聞いてみてもよく分からない、そんなときはもう次にどうしてよいか分かりません。だからついいつものルーティン、すなわち聞こえているふりをしてしまうのです。

私だけではないと知っています。

聞こえているふりをすることで、一時的にその場の不安な状況から逃れることができます、だからこそ、内心ではそれは建設的ではないと知りつつそうしてしまうのです。

習慣を打ち破ろう

悪い習慣を打ち砕くのではなく、シンプルにそれを良い習慣へと変えることができます。

“ふりをしてしまう”ルーティンを、何かもっと有意義なものに変えることができます。

私は聞きとりに苦労(=引き金)したときはいつも、繰り返してもらってもちゃんと聞き取れるか分からないので、言い直しをお願いするのではなく、事前に準備しておいた台本を使用します。

例えば、職場の大きな会議室の後ろの方の席で、同僚のジーンさんの発表を聞いているとします。にぎやかな社内の会議室では、発表の内容を理解するには、彼女の声はすこし小さいのです。私が彼女のそばに近づくことさえできれば...

会議室内の誰もがちゃんと聞こえているのに、私は彼女の発表内容を聞き取れなかったら(=悪い習慣が出る引き金)すぐにいまの内容を繰り返してもらうようにお願いする、それは一時的に状況を改善するには最適ですが、私はそうではなく次のように言います「ジーンさん、発表を妨げてすみません。実はこの場所からだとよく聞こえないのですが、内容を聞き逃したくないと思っています。ロブさん(彼はジーンの近くに座っています)、もし良ければ席を代わっていただけますか?近くに座ればもっとよく聞こえると思うのです」

ジーンさんもロブさんも人間です、彼らは全く気にしないでしょう。ジーンさんも彼女の発表をみんなにしっかり聞いてもらいたいと思っているので感謝してくれます。

習慣を打ち破る代わりに、それを単純に良いものに変えることができます

難聴があることでいつも何かを聞き逃しがちとしたら、現在の状況を変える良い機会と捉えて、将来の機会に備えて周りのみんなに難聴はどのようなものかを伝えましょう。これを十分に行うと、まわりの人たちはあなたが何を必要としているのかを覚え、あなたの日常がもっと楽になるような提案をしてくるかもしれません。

より効果を得るための、良い台本とは:

  • 1.彼らがまだあなたの聞こえづらさに気づいていないときは特に、難聴があることを伝えましょう。
  • 2.いまこの瞬間どのような聞き取りの難しさがあるのか説明しましょう
  • 3.特定の場面で、もっとよく聞こえるためにはどんな方法があるのか提案しましょう。

もう少し例を挙げてみましょう

  • 「私には難聴があります(1)、なのであなたの話の最初の部分を聞き逃してしまいました(2)冒頭の部分からもう一度話していただけますか?(3)」
  • 「私には難聴があります(1)なのでよく内容がつかめませんでした(2)いまお話しいただいた内容を別の言葉で言い換えていただけますか?(または、もう少しゆっくり、またはもう少し大きな声で)(3)」

これらの短い例では3つのポイントをすべてカバーしています。

もしこれがうまくいかなかったら?

時には、まったくあなたの状況を好転することができない場面もあります。そんなときは、気持ちの上でまたは実際にその場を立ち去りましょう。その場から歩み去る、それは完全な解決策ではありません。でももし誰か興味深い人と一緒にその場を離れるとしたらこれは全く悪い話ではありません。

文頭のパブの場面を思い出してみてください。あなたは新しくできた友人とまだ話しを続けています。話を続けたいと願いますが、その分岐点を決めるのはあなたです。

あなたの台本がすべて失敗してしまって、聞こえているふりもできないとき、ただ立ち去っても良いのですが、まだとっておきの手があります。 「あなたの話はとでも面白いですし、おはなしを全部聞き取れたらと思うのですが、難聴がありここでは話がよく聞こえません。誰の話もここでは実際よく聞こえないのです。一休みするために隣の静かなレストランに軽く食べに行こうと思っているのですが、お話しの続きも聞かせていただきたいので一緒に行きませんか?」

もちろん彼女が同意してくれるかどうかはわかりません。でも彼女の答えが何であれあなた自身に正直であることで自分自身に打ち勝ったことになります。

筆者:ジャンルカ=トロベッタ (Gianluca Trombetta)

from Healthyhearing_ガルシア=トロベッタ氏
筆者:ジャンルカ=トロベッタ氏 Healthyhearing.comより

ジャンルカ氏より、日本の皆さんに向け特別なメッセージをいただきました。“Anyone can learn to live well with hearing loss. You can do it, too. And you can do anything hearing people do, you just have to figure out the adjustments you need.”(日本語訳:誰でも難聴と上手に折り合いをつけられるようになります。それはあなたも同じです。難聴があっても健聴者ができることは何でもできます、どんな調整が必要かそのさじ加減を見つけ出す必要があるだけです。)

追伸:もう一つ追伸がありました。あなたの人生を変え、難聴があってもよりよく聞く方法についてさらなる情報が必要でしたら、どうぞ、私のウェブサイト(英語)を訪問していただき、無料のニュースレター(英語)に登録してください!

ジャンルカは、たとえ難聴でも、とっておきの人生を送る方法を教えています。もし今回ご紹介したお話をもっと知りたい場合には、getsuperhumanhearing.comよりジャンルカの無料ニュースレター(英語)や「レストランでもっと聞くためには」と題した無料のeBookを購読ください。

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本記事は米国HealthyHearingによって記載された記事を基に、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。当該記事は本社を置くデンマークまた米国での情報をもとにしており日本国内での基準と異なる場合もあります。本記事のコピーライトは healthyhearing.com並びにOticonに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingまたはOticonが指定する執筆者または提供者に帰属します。

引用元について:Contributed by Gianluca Trombetta August 18, 2017 , Healthy Hearing

英語版は下記から参照いただけます:https://www.healthyhearing.com/report/52773-Why-pretending-to-hear-is-bad-and-how-to-break-the-habit