オーディオロジー

難聴による認知負荷の増加

難聴による認知負荷の増加

難聴があると、会話を続けるために高い集中力が必要です。つまり、聴力低下がある方は、聴力低下がない方と比較して脳をより活発に働かせる必要があります。 難聴者が聞き取りの難しい状況を避け、周囲との交流に消極的になりがちな理由のひとつが、この認知的負荷にあると考えられます。*1

脳への負荷が大きいために、難聴者は、一日のなかで自分の行動に優先順位をつけ、夜までにエネルギーを使い果たさないように行動することを余儀なくされます。

聞こえに悩みを持つ人々はエネルギーの低下が速い

研究調査結果

*1 ことばの想起に対する聴力の隠れた影響および自己ペースでの聞き取り時での補完作用

この研究は、話す能力に与える難聴の影響について調査したものです。難聴者と健聴者をそれぞれグループに分け、物語の聞き取りを行い、その後その内容をどれだけ想起できるかを比較しました。物語が途中で途切れることなく、連続して話された場合、難聴者のグループでは難聴者が想起できた物語の詳細並びに主題は、健聴者のそれと比較して低い結果となりました。しかし、物語を録音し、録音された物語を聞き手のペースで一時停止しながら聞くことができるようにすると、グループ間での差はなくなりました。難聴者は、難聴を補うために精神的エネルギーを要することで、理解速度が下がり、簡単な聞き取りにも支障をきたすことが示されました。

T. Piquado et al. (2012)

年齢を重ねるとともに加速するエネルギーレベルの低下

私たちの感覚は年々鋭さを失っていき、日常的な作業であっても、脳にかかる負担は大きくなっていきます。つまり、日常生活のあらゆる出来ごとに対応することが難しくなっていくということです。

調査によると、若い成人と比較して、高齢者は騒音下の聞き取りに際し、より多くの聞く努力を必要とします。年齢を重ねるにつれて、音を処理する脳への負荷が大きくなり、精神的エネルギーが多く消耗されます。*2

また、難聴者の数は増加の一途を辿っています。65才を超える高齢者の40%から50%は、何らかまた、難聴者の数は増加の一途を辿っています。65才を超える高齢者の40%から50%は、何らかの聞こえの問題を感じており、70才を超えると、その割合は83%に上ります。*3

研究調査結果

*2 高齢者は、若い成人と比較して、騒音下の聞き取りにより多くの聞く努力を必要とする

聞く努力の測定には、同時に二つの作業を行う二重課題法が用いられました。主課題となる作業の達成に必要な努力が限界に達した時、副次課題の作業成績がどのように低下するかを計測する方法です。結果、高齢者は、ことばの聞き取りのために若い成人よりも多くの聞く努力を必要とすることが示されました。

P.A. Gosselin and J.P. Gagne (2011)

*3 加齢性難聴と高齢者

栄養の向上や医療技術の進歩によって、60代から80代、さらにそれを超える年齢の 人口が増加しています。米国では、75才を超える高齢者の40%に加齢性難聴があると され、高齢化社会の加速に伴い、その割合はさらに増加の傾向にあります。最近の推計 では、米国国内の軽中度以上の難聴者は、2030年までに3500万人から4000万人にまで 増加するとされています。

A. Ciorba et al. (2012), G. Gates & J. Mills (2005)