オーティコン補聴器、「聞こえ」と「認知機能」、現代の難聴に纏わる問題に取り組む

18/01/17

※本プレスリリースは、オーティコンデンマーク本社で発表されたプレスリリースの抄訳です。

報道関係者各位

110余年の歴史を持つ補聴器メーカー、オーティコン補聴器(本社:神奈川県川崎市、プレジデント:木下 聡、以下オーティコン)は、先進補聴器Oticon Opn™ (オーティコン オープン)に搭載された脳の働きを第一に考える「BrainHearing™(ブレインヒアリング)」というアプローチと難聴と認知機能に関する論考を発表いたしました。

難聴は、関節炎と心疾患に続いて3番目に多い身体疾患といわれています。米国人口の約20%ないし約4800万人が難聴を持つといわれています(日本では人口の約11%※1ないし約1,400万人)。加齢による難聴に目を向けると65歳では約3人に1人が一定の聴力低下を経験するとされ、75歳でこれが3人に2人へと増加します。難聴は身体的な健康に影を落とすだけでなく、認知機能、精神的鋭敏さ、社会的スキル、家族関係、全体的な生活の質の側面にも影響を与えます。

Oticonは聴覚学および補聴器、そして聴覚分野での医用機器における世界的なリーダーです。当社の最新補聴器Oticon Opn(オーティコンオープン)の開発に際しての挑戦は、難聴が引き起こす即時的な影響と同時に、長期的な影響を評価し、難聴者を悩ませているこの問題に対処することでした。

社会的スティグマ ~聞こえづらさを放置しておくことで失うこととは~

難聴者にとっての最大の障壁は、騒がしい環境または複数の人が同時に話している場面での「会話の理解」にあります。聞こえづらさによって、様々な社交の場への参加が困難になることがあります。例えば、いま何を言ったのか繰り返すよう周囲に頼んだり、もう少しハッキリと話すようにお願いしたり、会話を理解するためにテレビを消すなど、難聴者にとってその場にいる人数が増えるほど、会話についていくことが困難になります。

しかし、聞こえの問題に対して長期的に適切な対処を行わず難聴を放置しておくことは、次第に社会的な場面から距離を置くこととなり、周囲との繋がりや、積極的に社会と関わる機会を失うことにも繋がります。

難聴を放置すると、会話への対応が難しいことに気づきます。周囲の人々との関わりを持つ際、脳は欠如している音の情報を補い、言葉の意味を推測しようと働き続けます。その結果、脳への負担が増大することになります。聞くことだけに多くのエネルギーを消費すると、大きな疲労が伴います。疲労を感じ引きこもりがちになることで、社会的孤立に繋がる恐れがあるとされています。

認知的ジレンマ

多くの人々は、私たちは「耳」で聞いていると考えていますが、実際は「脳内」で音が意味を持つ情報となります。「脳」は音の持つ意味を理解する作業に多大な労力をかけているため、耳から入る音信号が難聴などによって劣化すると、不足した部分を補おうと脳を働かせる結果、脳への負担が増大するのです。

本来、脳が処理に慣れている音信号であっても、難聴があることで音の詳細な情報が欠如するため(多くは言葉の子音が欠如する)、脳はそのギャップを埋めるように働きはじめます。これによって難聴があると非常に疲れやすく、日常活動に必要な精神的エネルギーを消耗してしまうため、脳の健康に重要とされる“社会とのつながり”を回避するようになるのです。

精神的な鋭敏さを維持する最適な方法は、クロスワードや数独にあると考える人は多いですが、健康的に年齢を重ねていくことに関する研究によると、実際に精神的な鋭敏さの維持に必要なのは、「毎日30分間の積極的な会話」とされています。Journal of the American Geriatrics Society (米国老人学会誌https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26480972)という学会誌で発表された最近の研究によると、補聴器を積極的に使用する成人の難聴者は、認知機能低下のリスクが軽減されることが分かっています。この研究から、補聴器の積極的な使用により、脳を刺激することに重要な「社会とのつながり」を維持できることが示唆されました。このように、社会的交流において時に必要とされる精神的な駆け引きによって、他の運動と同様、脳の健康維持と認知機能の低下を遅らせるのに役立つことがわかりました。

真の利点

オーティコン・オープン

現代の補聴器技術において、脳が聴覚に果たす役割がますます重要視されており、Oticonはこの問題に真っ向から取り組み、脳の聞く働きを直接サポートできる補聴器Oticon Opnを生み出しました。Opnは難聴を持つ人々が直面してきた最大の問題、「騒がしい場所での聞き取り」を解決するために生まれた補聴器です。つまり、難聴を持つ人々にとって最も難しい聞こえの環境とは、人々が集い常に騒音があふれるレストラン等の環境で、複数の友人たちと会食するような場にありました。

従来の補聴器の技術では、チップの処理能力の限界からこのような状況での聞き取りに限界があり、騒がしい環境では主に目前の話者の声に焦点を当て、その他の騒音を抑える「指向性」と呼ばれる技術で対処していました。しかし、指向性の限界として、1対1の会話には対処できたとしても、食事会のような3人、4人、それ以上の人々の会話が同時に展開する状況では、それぞれの話の流れについていくのは極めて困難でした。

しかし、従来の50倍※2の処理能力をもつ高性能チップ「Velox™ (べロックス)」を搭載した補聴器「Oticon Opn」の登場により、これまでのように目前の話者だけでなく、周囲360度の音環境を耳に届けることが可能になりました。

Opnは、周囲360度の音環境を1秒間に100回スキャンし、全方向の音を高速に分析してバランスをとり、より自然な形で周囲の音を耳に届けます。これにより、ユーザーは従来のように前方のみならず、側面や背後など複数の異なる会話に自然と耳を傾けられるようになり、膨大な労力を費やすことなく会話の流れについていくことができます。その結果、ユーザーは他人との交わりに自信を持てるようになり、音響的に聞き取りが難しい環境にも積極的に身を置けるようになります。このように「Opn」の登場により、従来の補聴器に採用された、音の焦点を絞りこむ“指向性”機能はもはや過去のものとなりました。

またOpnは、補聴器使用者にとって重要とされる「会話の理解」を高めることができます。実際、Opnは他の先進技術を搭載した補聴器と比較して、会話の理解を30%高めることが実験によって明らかになっています※2。またOpnの使用により、会話を理解する際の労力は20%減少するためより疲れにくく※2、会話の理解に必要な「脳の資源」が少なくてすむため会話を20%多く記憶することができます※3

Oticonの「脳の働きを第一と考える」アプローチがOpn に搭載されたことで、会話を理解するために多大な労力を費やす必要がなくなり、騒音下で会話を理解する際に必要な「精神的労力」は最小限に抑えられ、社会的交流や脳を刺激する活動を行う際に必要な「認知的資源」を温存できるようになりました。これにより社交の場がもっと楽しくなり、社会活動への参加頻度が高くなることで認知機能を刺激し、健康的に年を重ねることを促進いたします。

出典・関連ページ

  1. 日本補聴器工業会などが実施した「JapanTrak 2015」
  2. Oticon Alta2 Pro (オーティコン アルタ2プロ)との比較
  3. メリットは個々の処方によって異なります。

詳細をご希望の方は、Oticon白書「Opn™ Clinical Evidence(Opn™の臨床的根拠)/英文」をご覧ください。

※文中に記載の名称は、各社の商標または登録商標です。

オーティコンについて

補聴器におけるパイオニアであるオーティコン社(Oticon A/S)は、ハンス・デマントにより1904 年にデンマークに創設されました。オーティコンは世界で唯一の慈善財団が所有する補聴器会社であり、ウィリアム・デマント・ホールディング社の傘下にあります。その日本法人としてオーティコン補聴器は1973年より日本市場における製品の製造・販売を行っています(http://www.oticon.co.jp)。オーティコンの企業理念「ピープル・ファースト」とは、「聞こえに悩む人々を第一に考え、彼らが自由に伝えあい、自然にふるまい、そして活動的に生活できるように力づける」という信念に基づきます。オーティコンは先進のノンリニア補聴器、フルデジタル補聴器および人工知能補聴器を開発し、業界のパイオニアとして革新的な技術を難聴者とともに開拓してきました。1977年には先進技術とオージオロジー(聴覚学)を研究するエリクスホルム研究所(デンマーク)を設立、世界中から参集した様々な分野の科学者と1,000人以上のテストユーザーと共に将来の補聴器開発に取り組んでいます。オーティコンは世界各国で補聴器をはじめ、聴覚関連機器、医療機器の製造・販売を行っています。

本件に関するお問い合わせ先

オーティコン補聴器 マーケティング部(担当:山口、渋谷)

TEL 044-543-0615 / FAX 044-543-0616 /E-mail info@oticon.co.jp