PDF版ダウンロード

FACE:最先端の研究と補聴器テクノロジーをつなぐ架け橋として

ジェームズ・ハート博士 

ジェームズ・ハート博士
英国・サウサンプトン大学で博士号を取得、一貫して聴覚研究の道を歩む。交際的な聴覚診断機器メーカー、インターアコースティクス社の研究ユニット長を経て2020年1月、エリクスホルム研究センター長に就任。来日時に感じた日本のおもてなしの心と、新幹線の効率性に強い印象を受けたと話す。登山、ロッククライミングが趣味。将来、日本の山に挑戦することを楽しみにしている。

私はエリクスホルム研究センター(以下「ERC」)で、才能あふれる研究者達とともに最先端の研究に関わり、心躍る毎日を送っています。ERCは補聴器業界で唯一の独立した研究機関として1976年に設立されました。現在は約40の世界有数の学術研究機関や医療機関と聴覚に関係する共同研究を進めるとともに、基礎研究の成果をイノベーションや新技術に変換し、製品開発に反映させるということも行っています。学術分野最先端の研究と産業との架け橋となる重要な役割を担っていると実感しています。

短期的な製品開発のための研究とは一線を画し、ERCでは5年から10年に渡る長期的な視点で研究を実施しています。オーティコンの補聴器開発の源である「ブレインヒアリング」という考え方も、ここERCで行われた基礎研究を元にして生まれました。私たちの研究は、難聴者の人生や生活を変えうる技術(Life-Changing Technology)を提供するオーティコンの原動力の基礎となっています。

「聞きたいと思う音に優先的に注意を向けること」は社会活動には欠かせないことなのですが、補聴器を使用している難聴者の方々には自然に行えないのが実情です。このために社会活動への参加が消極的になると認知機能低下のリスクを高めてしまうことにつながります。ERCではこのことに注目し「聞きたい音に注意を向ける」という脳のプロセスを研究し、その成果を次世代の補聴器開発に応用しようと努めています。

私たちは、難聴のある方々を中心にすえ、その方々の日常生活をサポートし、社会活動への参加レベルを高めていただくことを目標として研究活動を進めています。補聴器自体がよりいっそうインテリジェンス(知性)を高め、装用者の状況やニーズを的確にとらえ、そして補聴と同時に認知機能も健康に保てるようにサポートする――そのような世界の実現を目指し、私たちは日々研究を続けています。

LIFE:ITの力で、聴覚障碍者にとってもっと便利な社会へ

井上晶雄さん 

手話+4か国語をマスターした井上さん。語学習得のコツは「ひたすら書いて語彙をふやすこと」と「音読」。なんと、あと3か国語は習得したいそうだ。

一昨年、「IoT補聴器」に関心をもち色々調べました。IoTとはInternet of Things、「モノのインターネット」という意味です。オーティコンの補聴器は「IoT補聴器」であるだけでなく「脳の聞く働きをサポートする」というコンセプトに基づいて作られているという点にも惹かれました。

IoT機能を使って、補聴器のスイッチを入れると同時に部屋中の照明をオンにしたり、補聴器のモードに併せて切り替わるようにしています。通信系企業の技術職である僕は少しプログラムを加工して、補聴器のバッテリー持続時間が自動でLINEに通知されるよう、自分なりに工夫して便利に使っています。 ※(IFTTT(イフト)というプラットフォームを使用)

他にもiPhoneやiPadの音声を直接補聴器で聞くことができたり、別売の「コネクトクリップ」を使うとパソコンの音楽やオンライン会議の音声をクリアに聞くこともできます。そのため、会社で勤務中に音楽を聴いていても、見た目は補聴器ですから誰にも気づかれない、という良さもあります(笑)。

趣味は旅行、語学学習とピアノ、サッカーです。これまでに英語、中国語など手話を含めると5つの言語を学びました。「なぜそんなに?」とよく聞かれますが、言語にはその国の文化を知ることができる面白さがあるから。補聴器の性能が進化して、外国語の子音がはっきり聴き取れるようになったため、海外の友人に聞き返すことが減りました。一方、ピアノは学生時代から独学で始めました。一生かかっても終わらないくらい膨大な数のクラシック曲の中からやりたい曲を選び、ひとつひとつ挑戦しては習得していくプロセスが楽しいのです。

井上晶雄さん 

7年前から独学で練習しているピアノ。初めは譜面に「ド」「レ」とふりがなをつけながら練習していた。クラシックの名曲や映画音楽など、いまやレパートリーは約30曲!

語学もピアノも、新しい体験は脳によい刺激を与えてくれます。そういえば、オーティコンの「脳で音を聞いている」という考え方は、まさに小学生のころから補聴器を装用している僕の感覚に近く、無自覚のうちに脳が音を処理している、という感覚があります。

これからの夢は、僕がこれまで難聴のために直面した問題をITの力で解決すること。今、プライベートな時間を使って障害者手帳を持つ人がもっと便利に生活できるようなアプリケーションを開発したいと考えています。聴覚障がい者にとって今よりも一歩、便利な社会を実現したいのです。(2020 年7月取材)

SCENE:最新の技術を搭載した聴覚検査機器を少しでも使いやすく。

ダイアテックカンパニー 榮田真衣

私はオーティコン補聴器と同じデマントグループの聴覚検査機器部門である、ダイアテックカンパニーに所属しています。海外本社で開発された新製品を日本の臨床現場に則すよう最適化させる作業や、既存製品のアップデートや管理を行うのが私の仕事。現場の医療従事者や補聴器認定技能者から信頼され、使いやすい製品となることを目指しています。言語聴覚士としての知識や病院勤務の経験も現職で非常に役立っています。

補聴器テクノロジーの進化に伴い、検査機器のテクノロジーも大きく進化しています。例えば最近発売し た新製品は、補聴器適合検査を1台で実施でき、最新のテクノロジーを用いてコンパクトながら、臨床現場からの要望に応じた新しい機能も搭載しています。より正確な測定ができ、結果をわかりやすく説明するツールも備えているため、補聴器ユーザーの皆さまにより質の高いフィッティングを提供できます。難聴の発見から補聴まで、あらゆる聞こえのケアを提供できるのがデマントグループの強み。日々の仕事を通じてより良い製品をお届けすることで、日本の聴覚ケア業界および聞こえに悩む方に少しでも貢献できたら嬉しいです。

一聴来福

一聴来福 佳作

笑顔を届け隊!

 日々の仕事や出張でご多忙な50代女性のU様は、使い慣れた補聴器が最近聞き取りにくくなり、仕事にも差し支えストレスになっていると悩まれていました。最新の補聴器をご提案しましたが、「引退も近いので…」と初めは消極的でした。しかし最新の補聴器を試聴いただいたところ、聞こえが改善されただけでなく「補聴器とスマホが連動するなんて!」と驚かれ購入されました。引退を考えていたU様が自信を取り戻され「もう少し第一線で頑張ろうと思う」と言われたことが大変嬉しく、改めて補聴器のテクノロジーは聞こえに悩む方の力になれるのだと、この仕事の意義を実感しました。

(営業本部西日本エリア・門前 勇樹)