ブレインヒアリング

BrainHearing™~難聴と認知機能低下の関係~

ブレインヒアリング技術

補聴器の装用が、難聴による認知機能低下のリスクを軽減

Journal of the American Geriatrics Societyに掲載された研究「自己申告による難聴・⾼齢者における補聴器および認知機能低下〜25年間の研究※1」によると、補聴器を装用することで、難聴に起因する認知機能低下のリスクが減少することが明らかになりました。

フランスのボルドー⼤学で神経⼼理学および加齢疫学の研究を率いるエレナ・アミーバ教授は、脳の⽼化を研究するために用いられるコホート研究※2(PAQUID)に取り組み、65歳以上の成人3,670名を対象に25年間にわたって調査を実施、⾼齢者が補聴器を装用した場合と、装用しない場合における認知機能の低下について比較しました。
その結果、難聴がない被験者グループと、難聴があり且つ補聴器を装用した被験者グループとの間では、認知機能の低下率における差異は認められませんでした。
一方で、難聴のある被験者グループは、認知機能を測る検査として広く用いられているミニメンタルステート検査(MMSE)の基準スコアが、年齢や性別、学歴とは関係なく有意に低いことが明らかになりました。この初期研究結果は、2015年に聴覚ケアの専門家300名以上が一堂に会したオーティコン社主催の専門家会議にて、アミーバ教授により発表されました。

2016年にエレナ・アミーバ教授がオーティコンのエリクスホルム研究センターへ意見交換のために訪問。アミーバ教授は、自身の研究について意見交換が行われました。アミーバ教授は「この研究が、加齢や難聴に関してのステレオタイプの考え方の方向性を変えるきっかけになれば」と述べました。

オーティコン社オーディオロジー (聴覚学) および応用聴覚学研究所⻑であるトーマス・ベーレンスは、アミーバ教授の実験について、「この研究は、補聴器装用者の認知機能低下のリスクが、難聴のない人が加齢によって生じるリスクと変わらないことを示しています。
しかし、難聴でありながら補聴器を使用しない場合、認知機能の低下は加速します。この研究により、補聴器が認知機能低下の加速を抑えることが初めて実証されました。これは、難聴があるにも関わらず、補聴器の装用をためらっている75%以上の人々にとって、強⼒な動機づけとなるでしょう。」と述べています。

社会的交流および認知機能活性化活動の改善

 補聴器装用で脳を元気にポスターサムネイル 補聴器装用で脳を元気にポスターダウンロード

⾼齢者の難聴と認知機能低下のリスク増⼤には、相関関係があることは数々の研究を通じて明らかになっています。ジョンズホプキンス⼤学による2 つの研究においても、難聴が⾼齢者の認知機能低下を加速させ、おそらくは認知症の発症にも関係していることが示されています。この分野における多くの専門家は、難聴により⾼齢者の社会的活動が減少することが認知機能の低下に繋がっているのではないかと考えています。そのため、難聴者が補聴器を使用し、社会活動に活発に参加することで適切なレベルの社会活動が維持できれば、認知機能が急速に低下するリスクを抑えられるという意⾒に同意しています。今回の新たに発表された研究結果は、以上の仮説を実証するものになるでしょう。

難聴と認知症との関連性はさらに複雑です。最も適切な説明のひとつとしては、難聴による認知機能の低下は、アルツハイマー病による機能低下と相まって、認知症の診断閾値を早期に超えてしまうというものです。

 

「脳を第一優先に考える」補聴技術

難聴者が騒音の中で会話を聞き続けるためには、精神的なエネルギーを必要とします。今回の研究結果は、補聴器は、難聴者の精神的なエネルギーの負担を最小限に抑えられるように設計されなければならない、というオーティコンの補聴器設計のコンセプトの正当性を強⼒に裏付けるものです。

約20 年間にわたり、世界有数の研究機関であるオーティコンのエリクスホルム研究所では、音の意味を理解する脳の働きをサポートする「BrainHearing (ブレインヒアリング)」技術の研究に注⼒してきました。この技術は、音声信号を可能な限り明確かつ正確に脳に伝えることで、脳に届いた音信号の意味を最も解釈されやすいように慎重に処理する補聴器のアプローチです。より自然な音の情報が多いほど、脳は苦労せずに何を言われているかを理解できます。より自然で詳細な音の情報が脳に届くことで、脳は苦労することなく何の音が聞こえているのか、何を言われているかを理解できます。つまりより楽に、少ない労⼒で聞くことができるということです。

オーティコンのBrainHearing技術によって、補聴器を装用する人々は、1日を通して聞くことから生じる“精神的な労⼒”を減らし、日常をもっと活動的に過ごすために、これらのエネルギーを使うことができるのです。前述の所⻑ベーレンスは次のように述べています。「音から意味への変換は、脳で⾏われています。難聴のように聴覚が損なわれると、脳に届く音信号は、脳が本来処理し慣れていたはずの音声信号に対し、必要な情報が足りません。これこそが、人々が難聴によって疲弊し、難聴がなかった以前のように毎日を活動的に過ごす気⼒が奪われてしまう理由です。社会的活動に加わることに疲れ、引きこもってしまうこともあるでしょう。抑うつや健康問題によって社会的に孤⽴した場合、認知障害やアルツハイマー病のリスク因子が増加することは以前から認識されています。」

聴覚ケアはヘルスケア

難聴は、⾼齢者に最もよくみられる症状です。世界保健機関によると、世界中でおよそ3 億6000 万人が聴覚障害を抱えています。加齢による脳の変化を研究するPAQUID 研究は、多くの難聴を持つ人が診断を受けておらず、あるいは難聴の治療も⾏われていないという問題の重要性を強調しています。一定の難聴を抱える人のうち、治療を受けていない人の割合は75%以上にのぼります。難聴の治療を受けた人でも、その多くは補聴器を使用するまでに平均7〜10 年もかかっているのです。

ベーレンスは「この研究は、自身の難聴に対して何かアクションを起こしたいと考えていながら、思い留まっている人にとっては朗報です。補聴器を使うということは、単に今日耳がよく聞こえるというだけではなく、難聴を治療せずに放置しておくと、⻑期的な影響を及ぼすことになることが分かったのです」と述べています。

※1 参照文献: “Self-Reported Hearing Loss, Hearing Aids, and Cognitive Decline in Elderly Adults: A 25-Year
Study”, The American Geriatrics Society Oct. 2015, OCTOBER 2015–VOL. 63, NO. 10.
◆本研究結果は、以下WEB サイトにも掲載されています(英語のみ)。

https://eorder.sheridan.com/3_0/app/orders/5312/article.php#2099

※2 コホート研究(cohort study)とは疫学研究における手法の1 つであり、特定の集団(コホート)を対象として⻑期的に経過を追跡する調査手法です。