雑音は脳に負担をかける
騒がしい場所で会話を理解するのは、とても難しいものです。難聴があると、脳は雑音を抑制しながら、会話を理解しようと、より多くの労力を使わなければなりません。あなたに合った聞こえのサポートを受けることで、脳への負担を減らしながら、より多くの音を自然に聞き取れるようになります。

あなたの耳は、すべての音を聞いている
耳は、眠っているときでさえ「オン」の状態です。つまり、周りにある音の情報は、絶え間なく脳に届いていることになります。脳はその音の情報をもとに、「どんな音が聞こえているのか」、「その音がどこから聞こえているのか」、「その音が何を意味しているのか」を瞬時に判断し、周囲の環境全体を把握しています。

雑音が多いと、音がぼやける
カフェや人通りの多い場所など、周りが騒がしい環境では、脳は聞こえてくる音を分けて整理し、どの音に集中するべきかを決めるのが難しくなります。まるで、手がかりの無いままにパズルのピースを組み立てようとしているような感覚です。
脳の自然な聞く働きのためには、音の全体像が必要
騒がしい場所も含め、より良い聞こえを実現するには、補聴器が一人ひとりの聞こえに合わせて、必要な音を正確に増幅して届けられるよう調整することが大切です。ただ単に「すべての音を大きくする」のではなく、その人が必要とする音をしっかり届けることが重要なのです。
しかしながら、補聴器は背景の雑音を完全に消すべきではありません。なぜなら、脳は周りの音すべてにアクセスしながら、自然な形で「何を聞くか」を判断しているからです。補聴器は、聞きたい音をしっかり届けつつ、聞きたくない雑音は抑制するといったバランスが大切です。そうすることで、脳がより自然に音を理解でき、騒がしい場所でも会話が聞き取りやすくなるのです5。
「マウス(mouse(ネズミ))」?それとも「ハウス(house(家))?
「シット(sit(座る))」と「フィット(fit(適合する))」のように、発音の微妙な違いを聞き分けられるのは、音の細かい部分を正確にキャッチできているからです。特に「f」「s」「sh」といった音は、聞き分けが難しいものです。しかも、周りがうるさい場所では、さらに難しくなります。
だからこそ、大切なのは聴覚ケアの専門家に相談し、「騒がしい場所での聞こえ」をチェックすることです。
聞き取りのストレスの増加
音が大きくなると、それに合わせて「聞き取り」のストレスも増します。心拍数が上がり1、会話を理解するためにより多くの労力を必要とします。

騒音が難聴者に与える影響
難聴があると、騒がしい環境は特に大きな負担になります。脳が受け取れる音の情報は少なくなり、しかも「解像度の低い動画」のように質の悪いものになります。さらに、音を聞き分けて集中する力も低下し、不要な音を「無視する」ことが難しくなるのです。これにより、「会話の理解が難しくなる2」、「聞き取りの労力が増える3」、「記憶への定着が低下する4」といった悪循環が起こり、ストレスがさらに増してしまう可能性があります。
あなたの聞こえをサポート
私たちは「騒がしい環境でどのくらいの聞こえの支援が必要か」を測定するための新しい方法を採用しています。この測定結果を用いることで、補聴器の専門家が、騒音下でその方にとって適切な量のサポートを補聴器に処方することができます。
参考文献
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- (Rönnberg, J., Lunner, T., Zekveld, A., Sörqvist, P., Danielsson, H., Lyxell, B., ... & Rudner, M. (2013). The Ease of Language Understanding (ELU) model: theoretical, empirical, and clinical advances. Frontiers in systems neuroscience, 7, 31.)
- Santurette, et al. 2020. Oticon More clinical evidence. Oticon Whitepaper.
- O'Sullivan, A. E., Lim, C. Y., & Lalor, E. C. (2019). Look at me when I'm talking to you: Selective attention at a multisensory cocktail party can be decoded using stimulus reconstruction and alpha power modulations. European Journal of Neuroscience, 50(8), 3282-3295.