限られた音情報が、聞こえの問題を脳の問題へと変えてしまう可能性があります。研究によると、難聴に対処できていないと、脳や生活に悪影響を及ぼす可能性が示されています。
難聴は、聞くことの負担を増大させます。聞こえている内容を理解するのが難しくなり、聞き取りのストレスや精神的負担が増大し、疲労を感じやすくなり、聞き取りが困難になると諦めてしまう傾向が強くなってしまいます。さらに、難聴を抱えていると、聴覚以外の感覚が優位になってしまうリスクが生じます。
聞き取りの労力の増加
音の情報が少ないと、脳は音を認識するのが難しくなります。脳は音の空白を埋める必要があり、聞き取りの労力が増します1。
聞き取りのストレスの増加
会話の理解が困難になると、聞き取りのストレス2が生じ、交感神経系が活性化して心拍数が上昇します3。また、短時間のストレスでも認知能力に悪影響を与える可能性があることが研究で示されています4。
精神的負荷の増加
人が何を言っているのか、今何が起こっているのかを推測しなければならないと、脳への負担が増加し、記憶力や実行力が低下します5,6。
脳機能の再編成
聴覚中枢に十分な刺激がないと、視覚中枢や他の感覚がそれを補い始め、脳の構成が変化していきます7。
音が内耳に届くと、蝸牛の中でニューラルコードに変換されます。この情報は、聴神経によって脳の聴覚中枢(聴覚皮質)へと送られます。 聴覚中枢内で、このニューラルコードが意味のある音となり、脳によってさらに解釈・分析されます。聴覚中枢にはこれらのタスクを担う2つのサブシステムがあります。それは、「捉える」サブシステムと「集中する」サブシステムです11,12。
ステップ1:捉える
「捉える」サブシステムは、音の性質や方向に関係なく、周囲のすべての音をスキャンして音の情景(周りの音)の全体像を再現します。
「捉える」サブシステムは、良質なニューラルコードを元に音の全体像を再現し、音を分離することで周囲で何が起こっているかを判断します。これにより、脳は何に集中して聞くべきかを判断することができるようになります。
ステップ2:集中する
「集中する」サブシステムは、まず音の情景の全体像を把握します。集中したい音、聞きたい音、または注意を払いたい音を特定し、無関係な音は無視されます。
2つのサブシステムはそれぞれ異なる機能を担っていますが、私たちの聴覚は、この2つのサブシステムの連携の良し悪しに大きく左右されます。なぜなら、この2つのサブシステムの相互作用によって、私たちは常に現在集中している音を優先することができるからです11,12。
脳は、毎秒4回、意図的に注意をそらして周囲の状況を確認します。これにより、重要な音が現れた場合、集中する先を切り替えることができます。
2つのサブシステムがうまく連携すると、脳の他の部分も最適に機能でき、音を認識、記憶、想起することが容易になり、周囲の状況に反応しやすくなります。
従来の補聴器技術は、指向性、利得減衰、音声優先、そして従来の圧縮技術によって、音の情景の全体へのアクセスを制限しています。
これは周囲の音から人々を遮断するだけでなく、脳の自然な働きにも反して、耳から脳へ質の低いニューラルコードが送られる原因となります。質の低いニューラルコードは、「捉える」サブシステムの正常な働きを困難にし、「集中する」サブシステムにも悪影響を及ぼします。
結果として、従来の補聴技術は、脳が音を聞き取り、理解する上で適切な音の情景が再現できないと言えます。
オーティコンの目標は、できる限り自然に近い「聞こえ」を提供することです。そこでオーティコンは、ブレインヒアリングという開発アプローチで、脳の本来の「聞く」働きを発揮できるよう周囲すべての音を届けるための技術開発を行っています。
オーティコンのBrainHearing™テクノロジーの中核を成すものは、業界をリードする次の3つのモアサウンドテクノロジーです:モアサウンド・アンプリファイア、 モアサウンド・インテリジェンス、モアサウンド・オプティマイザー
オーティコンの補聴器は、単に聞こえを改善するだけではありません。脳の聞く働きを支え、難聴のある方のウェルビーイングにも貢献します。
オーティコンは、”人生を変えるほどの効果”を裏付けるために、業界水準を超える先進かつ厳格な研究を行っており、聞き取りの労力の軽減、記憶の想起の向上、聞き取りのストレスの軽減を実証してきました。
脳波(EEG)測定、瞳孔測定、VR(仮想現実)、心拍モニタリングなどの新しい視点からの研究手法を用いて、実際の生活環境に近い聴取シナリオを再現しながら検証を行っています。
参考文献