子どもたちは、知らない人の声より、聞きなれた人の声をより理解する

17/12/18

※本記事は2014年12月17日に掲載した記事を再編集したものです。

人通りの多い街角で知り合いにばったり。騒音があっても知らない人の声よりよく知っている人が話す言葉ならば聞きやすく、相手の話す内容の理解にはそれほど困らない、そのような経験をお持ちではありませんか?

このことは「聞きなれた相手の声に関する優位性」として既に実証されていますが、米国NY大学では、この事実が子どもの聞こえにも当てはまるのかに着目をした実験が行われました。

よりありのままに近い声がいつも耳に届いて、その声が子どもたちにとってなじみのある声になること。このことには子どもたちの言葉の理解の発達にとってどのような意味があるのでしょうか?米国NY大学で行われている研究レポートをお届けします。

子どもたちは、知らない人の声より、知っている人が話すことばの意味をより理解

Children Understand Familiar Voices Better Than Those of Strangers

2014年10月6日米国NY大学発表(N-68, 2014-2015)

よく知っている人の声を聞くことは、学齢期の子どもたちの話しことばの言語処理能力を向上させるとNY大学スタインハート校文化・教育及び人材開発学部(NY大学:Steinhardt School of Culture, Education, and Human Development)が発表しました。

しかしながら聞きなれた声を聞くことで得られるメリットは、子ども自身がすでによく知っていることばの言語処理とことばの意味の理解に限られ、新しい言葉や初めて聞くことばでは有効ではないとしています。

子どもの言語に関するジャーナル(Journal of Child Language)の8月号で発表されたこの発見は、大人がことばを聞く際と同様に、子どもたちもまた、話者から得た情報を蓄積しその後の聞き取りに活用していることを示唆しています。

大人は、自分にとってなじみのある声は、より正確に、より迅速に、そのことばを処理して理解できることが研究によって実証されています。このコンセプトは、聞きなれた相手の声に関する優位性(the familiar talker advanage) として知られており、聞き取りが難しい場面での言葉の理解にも関連しています。うるさかったり、またはたくさん人がいる部屋のなかで大人たちは、知っている人の声の方が理解しやすいというのはその一例です。

しかしながら、子どもに関しては、『子ども自身がなじみのある声とそうでない声を聞いた際て言語理解に差があるのか』に関する研究はほとんどされてきませんでした。子どもたちの言語能力は発達段階にあって大人たち比べ鍛えられていない状態であり、さらにことばを聞く際の背景雑音は成人以上にマイナスに作用します。子どもについてもよく知っている声を聞くことが有益であれば、ことばの理解を向上させることで、脳の力を言語理解以外に向けることができるはずです。

「ほとんどの大人は人(それぞれ)の話し方に上手に順応することが出来ます。」とNY大学スタインハート校助教授で研究著者でもあるスザンナ・レヴィ氏(communicative sciences and disorders)は述べます。

「大人が慣れ親しんだ話者から得る(言葉理解)メリットを知ることは大変役に立ちます。大人は話者がどんな話し方をするのかを知って、その情報を自身に役立てることができるのです。私たちは、子どもたちがいつどんな風に慣れ親しんだ声にメリットを感じるのかについて感心を持ちました。」

この研究によって、子どもたちは慣れ親しんだ声によって話された語文はより正確に繰り返すことが出来、馴染みのある声で話されることばについては言語理解が高まることが実証されました。しかしながら言語理解の向上は子どもたちが良く知っている言葉に限定され、聞きなれた声であっても子どもたちが知らない言葉については、効果は確認されませんでした。

「子どもたちにとってよくしらないことばを耳にした際には、慣れ親しんだ声であるか、初めて聞く声であるかは関係がありませんでした、子どもたちにはいわれたことばの意味が理解できるかどうかだけの問題でした。」とレヴィ氏は言います。

最初のベースラインテストで一番パフォーマンスが低かった子どもについては、慣れ親しんだ話者の声を聞くことにひじょうに効果が見られました。加えて、ドイツ語アクセントのある3人の声で学んだにも関わらず、(6人のスピーカーによるテストで)初めて聞いた3人のドイツ語アクセントは言語理解への良い影響にはつながりませんでした。

レーヴ氏はこの発見に関し子どもたちが学習する際の背景雑音との影響についてもふれています。

「大人も子どもも、非常に静かな環境やヘッドフォンを着用した状態では言語処理が非常によくできます。しかし教室も含めて、学びの環境は静かではありません。」とレーヴ氏は言います。「この研究では、子どもたちは人が話すのを聞いて、聞いたことばを自分自身の言語理解の向上に役立てることができることが明らかになりました。

潜在的なメリットとして、騒音のある環境では子どもたちは、担任の先生の声といった良く慣れている声を聞くことで、「聞きなれた声はより正確に理解できる」を子どもたちもまた享受できるということです。

この研究は、アメリカ国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)の付属機関である国立聴覚・伝達障害研究所 (NIDCD: National Institute on Deafness and Other Communication Disorders)の助成を受けて研究されています。(1R03DC009851-01A2)

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