学校での聞こえの安全を守るということ

18/08/20

お盆を過ぎると、まもなく新学期・・・。夏休みの宿題のラストスパートをかけているお子さんもいらっしゃるかも知れません。米国では、一般的に9月が新しい学年のスタートの時期です。子どもを取り巻く環境が大きく変わる時期でもあります。

米国HealthyHearingから届いた記事は、通学から毎日を過ごす学校、そして放課後まで子どもたちの聞こえ守るために親御さんができることについて場面別にそのヒントをあげています。 子どもたちの聞こえの能力を問わず、現在ある聴力を守るために大切なことは、自宅ではまず親御さんが見本となること、そして学校の先生やスポーツクラブのコーチなど子どもたちが関係の深い場所の関係者に相談をすること。何より起こってはならないことですが、災害などの発生時、災害弱者になりがちな子どもたちとどのようにコミュニケーションを図るべきなのか、前もって準備できる具体的なヒントもあげられています。

Hearing safety at school, Tuesday, August 4th, 2015

米国HealthyHearing 2015年8月号掲載の翻訳転載

著者:Debbie Clason, staff writer for Healthy Hearing

学校での聞こえの安全を守るということ

健聴のお子さん、難聴のお子さん、ともに子どもたちを導くには、この世の中は騒音がいっぱいです。学校や球場といった場所は、安全な環境の一例ですが、学校の先生方や、スクールバスのドライバー、スポーツコーチとこどもたちの聞こえを守るいくつかのヒントをシェアしておくことは、お子さんの聞こえを守り、そして親御さんの安心につながります。

難聴のある子どもたちについて

緊急時に向けた計画を立てましょう
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あってはならないことですが、緊急の事態が起きたときに、子供たちはどのように行動すべきか知っておく必要があります。荒天時やその他自然災害の発生時に備えたプランを立てましょう。子供たちにはファーストレスポンダー*(緊急対応員)とどのようにコミュニケーションをはかるべきか話しておきましょう。学校の先生や、学校の事務局などに対し、緊急時で得に保護者がすぐに学校に駆けつけられないときや、補聴器が作動しなくなってしまった場合に、子どもとどのようにコミュニケーションをはかったらよいのか、指示書を紙に書いて渡しておきましょう。指示書はコピーを取り、そのコピーを子供のバックパック(ランドセル)などに入れておきましょう。

*訳注:米国ではこの緊急対応員をファーストレスポンダー(First Responder)とは、緊急時などに現場に最初に駆けつけて救護などを行う医学的な訓練を受けた人と定義されています)

先生と話しましょう

学校の先生に子供に難聴があることについて話しましょう、補聴器や人工内耳を装用している場合は、特に大切です。教室の前側の席に座ることができるかどうか聞いてみましょう、子供たちは必要に応じて口の動きを読むこともできます。緊急プランのコピーと併せて予備の電池、ドライキットや補聴器のコードクリップなどを一緒にして、先生に渡しておきましょう。

スクールバスの運転手さんへは…

お子さんが聾や難聴の場合、バスの乗り降りには少しだけ注意が必要です。スクールバスが家の正面に停まらない、また保護者がバス停まで付き添えないなどの場合は、近所の年長の生徒さんにバスの乗り降り時の安全に目を配ってもらえないか聞いてみましょう。バスの運転手に会い、お子さんの聞こえについて伝えることを計画しましょう。ルート循環開始前か終点に着いた後に、他の子どもたちがいないところで話をしましょう。緊急プランのコピーを渡し、何か問題が起きた際には、子どもにどのように指示をすればよいか知っておいてもらうことができます。お子さんにはバスの乗り降りの前後に安全に道を横断するように話しておきましょう。

休み時間や体育の授業など

走ったり、遊んだりすることは子どもたちの健康に大切なことです。しかしながらそうするためには、先生が笛を吹いたらそれを聞く能力が必要です。ロープを登ったり、野球ベースを走る際には補聴器や人工内耳が安全に正しい位置に装用されている必要があります。よく使われるボディクリップに加えて、親御さんによっては、布テープやボディグルー(訳注:日本ではそれほど一般的ではない)を使用して補聴器などのずれを防いでいます。どのような方法をとる場合でも、(電池をはじめとする)付属品の予備を先生に渡しておくことが大切です。

スポーツや課外活動

放課後には、さまざまな活動の世界が広がっています。課外活動を安全にかつ思いっきり楽しむためには器具を正しく使用する必要があります。親御さんがまずすべきことはコーチと話をすることです。お子さんが難聴であることと、補聴器や人工内耳をどのようにプロテクトするかについても伝えます。コーチの先生にも緊急プランのコピーを渡しておくことは、言うまでもありません。

健聴の子どもたちについて

アメリカ疾病予防管理センターによると、500万人以上の子どもたちが、騒音に起因する難聴を持っているといわれています。これがもっとも予防が可能な難聴です。聞こえの問題のないお子さんに対しては、聞こえを守る方法について教える必要があります。

スクールバスの中で

バスでの通学中電子機器などで音楽を聴く、またはゲームをするなどしている場合にはどの程度の音量に設定すべきかお子さんと話をしましょう。音量を増しがちなバスの中の会話や道路の喧騒からお子さんの聞こえを守るために、イヤホンの代わりにノイズキャンセリング付きのヘッドフォンを採用することも検討ください。

校庭で

一般的な街の往来の騒音は85デシベル(dB)程度、電車の警笛が90dB、掘削機の騒音は95dB程度とされますが、これらすべてはお子さんが外で遊ぶ際にふれる可能性のある音量です。[米国(労働省)職業安全衛生局によれば、85デシベル(dB)が日常生活における許容基準とされています。] 休み時間にお子さんの校庭を訪ねて環境を測ってみてください。もし騒音レベルが高すぎるようであれば、先生または、学校管理者に相談してみてください。お子さんには、警笛、サイレンや交通量の多い通りなど耳に痛みを感じるような騒音から離れるように言いましょう。必要であればノイズキャンセリングの付いたヘッドフォンなどを装着するようにいいましょう。(訳注:環境ごとに注意すべき対象は変化します。高性能なノイズキャンセリング機能付きのヘッドフォンを装着する場合などは、車の往来などにくれぐれも注意しましょう)

音楽の授業で

音楽を奏でることは楽しく、会話や言語の能力を伸ばすことに役に立ちます。周囲との協調や達成感といった力を伸ばすことにも寄与します。しかしながら大音量の音楽にさらされることは、内耳のデリケートな耳の細胞を恒久的に傷つけることにもつながります。 もしお子さんが新進気鋭の音楽家として学校のバンドなどで演奏している場合、音楽の先生と聴覚保護について話をしてみてください。生徒たちは、練習中または演奏中にイヤープロテクター(聴力保護具)をつけているでしょうか?もし装用のない場合には、聴力保護装置に詳しいクリニックや補聴器販売店などに相談の上、お子さんのためのオーダーメイドの保護具をつけさせることも考慮してみてください。

スポーツ並びに課外活動

休み時間や体育など同じに、学校で参加できるスポーツプログラムは、健康増進、チームワーク作りや(仲間との)協力、社会関係発達のきっかけになります。学校が認めるスポーツプログラムでもクラブスポーツであっても練習中や競技中に子どもたちの聞こえを守る必要があります。野球やソフトボールのヘルメットは耳やこめかみ部分を防御する必要があります、同様にレスリングでは適切な耳あてを装着する必要があります。

家庭で聞こえの健康についての手本を示す

保護者の方がお子さんのためにできるもっとも大切なことは、お子さんの聴く力を問わず家庭で聞こえの健康に関して自ら手本となることです。大音量の音楽や観衆の多いスポーツなどイベント、また狩猟やスノーモービルというような騒音レベルの高い趣味に参加するときは保護具を装着しましょう。テレビやカーステレオを適切な音量に保ちましょう。定期的に聴力テストを受け、お子さんの学校での聴力テスト結果についても話し合いましょう。お子さんと一緒に、家庭でそして学校で、聞こえの健康を保護して、聴力を失わないようにしましょう。

【本件に関するお問い合わせ】

■ オーティコン補聴器 (渋谷、山口)
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本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的名な情報提供を目的として意訳したものです。本文中の括弧書きはオーティコン日本における補足加筆となります。本記事のコピーライトは healthyhearing.comに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
引用元について:Hearing safety at school | Contributed by Debbie Clason, staff writer for Healthy Hearing| Friday, July 17th, 2015