BrainHearing™(ブレインヒアリング)特集第2回

05/02/17

BrainHearing: Attending to competing voices

すべては「脳」を考えることから。
BrainHearing™がオーティコン補聴器のアプローチです。

 

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今回の特集では、複数の会話が同時になされるとき人の脳はどうやってこれを判断しているのかについてご紹介します。

日常において、同時に左側と右側から声をかけられる、決して珍しいことではありません。私たちは難なくそれぞれの声に耳を傾け、無意識により自分にとって重要な順番に返事を返すことができます。

また、白熱した会議の席では、矢継ぎ早に意見が述べられ、私たちは次々に意見を聞いて理解し、会議の流れに沿って自分も賛成や反対の意見を述べるかもしれません。

これらの対応は、私たちにとってはそれほど難しいことではありません。但しこれを自動会話認識機能といった機械に置き換えたとき、機械はこれらの処理を適切におこなうことはできず混乱に陥ります。複数の会話を処理しているのは、人の脳だからです。

したがって補聴器を装用して複数の会話の情報を理解しようするとき、単に耳の機能を補うだけではこれらは決して可能にはならないのです。

「Brain:脳」から「Hearing:聞こえ」を考える。耳を通じて届いた音の意味を「脳」がより楽に理解できるように助ける、私たちはこれを BrainHearing(ブレインヒアリング)と呼んでいます。

BrainHearing™アプローチのさまざまな側面について次回以降も引き続き特集していきます。

BrainHearing™(ブレインヒアリング)

複数の話し手に同時に耳を傾ける、このタスクを行うために人の脳が行っていること

 

会議や社交の場面などで、複数の話し手に同時に注意を向けることは、私たち人間には難なくこなせるタスクですが、自動会話認識機能といった人工的な技術でこれを再現しようとすると例外なく失敗します。

複数の話し手に同時に耳を傾ける、このタスクを行うために人は末梢聴覚系(外耳、中耳、内耳、蝸牛神経が含まれる)、左右両耳からの神経信号、さらに耳を通じて脳に届いた信号について、聞きたい音とその他の騒音を分け、集中しその音の意味を理解するというプロセスを行っています。

複数の会話を同時に理解するプロセスには言語知識、文脈理解、またその人が持つ記憶や知識といった要素すべてを動員するため、かなりの認知努力が必要となります。複数の話者による会話が同時に耳に届く状況をここでは「音声が競合する状況」と称することにしましょう。

難聴が言語理解へ及ぼす影響は良く知られています。例えば、騒音下において、複数の声を聞き分ける力の低下、また語音聴取(ことばの聞こえやすさ)において今までぎりぎり聞こえていた音が聞こえにくくなるといったことが起こります。。これに加えて、認知能力の段階的な低下もまた難聴と関係があります。「音声が競合する状況」は、認知能力が低下した難聴者にとって極めて苦手な場面といえます。

競合する音声についてのテスト

 

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エリクスホルム研究センターでは、競合音声に関するテストを開発しました。これは二人の話者によって同じ強さで同時に読みあげられる物語を聞き、その聞き取り状況を分析するというシナリオに基づく作業テストです。 高齢の難聴者を被験者として実施されたテスト結果は、2014年に米国加州のタホで行われた国際補聴器会議(IHCON2014)において発表されました。(Bramsløw, Vatti, Hietkamp, & Pontoppidan, 2014)

連続文章タスク:Sentence on Test

 
このテストには2つのパターンが用意されました。
◆ パターン1:男性の声で録音された朗読が流れる中、女性の声で文章が断続的に読み上げられます。
◆ パターン2:女性の声で録音された朗読が流れる中、男性の声で文章が断続的に読み上げられます。
(パターン1,2で朗読される物語と断続的に読みあげられる文章は共通)

被験者は朗読にも耳を向けながらも、同時にそれぞれ断続的に読み上げられる文章を、声を出して繰り返すように指示されます。

パターン1、パターン2のテストを終えた後、被験者に対して物語の内容に関連する質問を行いました。回答にはいくつかの不正解が見られましたが一連の文章についての言語認識は100%に近い結果となりました。

二重文章タスク:Dual sentences

 

今度は、男性と女性の声で、同時にそれぞれ連続した文章が読み上げられます。テストに使用するそれぞれの文章では、タスクに基づきそれぞれ10-60% の文字点数を設定します。被験者は、文章が繰り返される前、または繰り返された後に、スクリーン上の指示するタイミングに沿って男性の声または女性の声で読み上げられた文章、または両方の文章を繰り返すように指示されます。(図表参照のこと)
このタスクは、人の脳において、捉える、分ける、集中する、そして理解する脳のスキルに依存しています。被験者(被験者は49歳から80歳で構成され平均は70代)は、このタスクは難しいと感じ、テスト中にストレスは感じたと答えた被験者もいたものの、不可能ではないとし、日常でもこのような課題があると答えました。

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図表1:二重音声”タスクにおける時間軸

この実験では二つの文章がそれぞれ男性と女性の声で同時のタイミングで断片的に複数回読み上げられます。被験者はスクリーン上のタイミングの指示に従って、女性、または男性、または双方が読み上げた文章を繰り返すように指示されます。タイミングはそれぞれ、文章が繰り返される前または後、または前後一回ずつという指示がランダムに出されます。

年齢を重ね、また難聴があったとしても、脳は二つの競合する声を聞き取れる

 
その上で、行われた「いくつキーワードを覚えているか」という記憶想起のテストにおいては、4人の話者が同時に話す背景雑音の条件を変えることなく、補聴器機能の予備実験ではあるものの、これらのテストの結果として、年齢を重ね、また難聴があるとしても、脳は二つの競合する声の聞き取りというタスクを完了することができるということが示されました。競合する複数の会話の最適な聞き取りについて、私たちは意識することなくこれらに反応しています。

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補聴器でそれを可能にするには?

 
競合する声の理解を補聴器で可能にするためには、できるだけあるがままの音が耳を通じて脳に届くようにする必要があります。脳の聴く働きを助け補聴器が有効に機能するためには、脳が本来持つ、複数の声や音がそれぞれどの方角からくるのかを捉え、どの会話に集中すべきかを判断する能力を引き出す必要があります。

複数の会話それぞれ耳を傾けるためには、音が左右のどこから来るのかを捉え、周囲の物理的環境と音の情報をできるだけ忠実に脳に伝えなければなりません。

ことばをより楽に詳細まで聞き取るためには、会話の単語や音の音素の始まりや終わり、つまり自然な声の特徴を細かく捉え、またこれらの音の波形をできるだけそのままの形を保って脳に届ける必要があります。

エリクスホルム研究センターについて

 

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エリクスホルム研究センターは、デンマークにあります。オーディオロジー(聴覚学)に関わる研究を、物理学、音響学、生理学、聴能学や工学に至るまで、幅広い分野の研究員と大学や民間企業の研究者との国際的協力により行なうため1977年に設立されました。
 
Find the IHCON poster (and other Eriksholm contributions)
Bramsløw, L., Vatti, M., Hietkamp, R., & Pontoppidan, N. H. (2014). Design of a competing voices test. In International Hearing aid Conference (IHCON) 2014. Lake Tahoe, CA, USA.

 

【本件に関するお問い合わせ】

■ オーティコン補聴器 (渋谷、山口)
■ TEL 044-543-0615
■ FAX 044-543-0616
■ E-mail info@oticon.co.jp
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